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あの日の選曲

 地震のあった9月6日。あの日、私はてっきり、「ここは山奥だから」と停電も軽く考えていました。それがまさかのブラックアウト。

 蝋燭のほの暗い明かりの中、テレビはもちろんパソコンもスマホも役に立たず、唯一の情報源となったのは古いアナログラジオでした。夫が捨てずに持っていた約30年前の小さなラジオ。普段なら見向きもされない存在です。

 

 椅子にもたれながら、次から次へと流れるニュースを聞き、事の深刻さが浮き彫りになるにつれ、気分はますます重たくなりました。

 長い長い夜。アナウンサーの声だけが部屋に響いていました。

 

 一通りのニュースを聞いた後、不意に突き上げてきた欲求は、音楽が聴きたい!でした。

 喉が渇いて水が欲しいように、私はどうしても音楽が聴きたいと思いました。贅沢は言いいません。気持ちを和らげる曲ならなんでもいい!ジャンルは問いませんから、と。

 私はチューニングを変え、砂漠で水を求めるような気持ちで、とにかく音楽を!と。

 願いが通じたのか、少ししてラジオから曲が流れてきました。おぉ!と感動しかけたところで私は固まりました。え?なに?こんな時に失恋の歌?・・・

 バッハをかけてくださいいとは言いません。しかし、選曲は考えて欲しかったです。