7月。夏の色が日に日に濃くなる。鳥の声が清々しい。
昨日、作家であるS氏のアトリエで、陶芸の焼き釜を作るにあたり「清めの会」という儀式があった。
林の中。モダンなアトリエ。中に入ると、シンプルな祭壇が用意されていた。
印象に残ったのは、真っ白な塩のサラサラした感触。レンガの直角。そして、「清めの会」とは直接関係ないが、アトリエを囲むように立っている白樺の木である。
外に出て、うすい水色の空を見上げた時、白樺の木々が空の一部になっていた。まっすぐ歪みのない白い直線。何本も何本も、空に向かってスッと立っている。
アトリエの中で宴が始まり、作家同士のコアな話に耳を傾けつつ、昼間のアルコールに酔いもまわってきた。私はぼんやりしつつ、窓から見える白樺に何度もみとれた。
何の覚悟も予想もない時に、あまりにも美しいものに出逢うと、その瞬間も、次の瞬間も、現実はもうどうでもいいと思う。日々の煩わしいことも。僅かな理想も目標も。そして、生きていることすらも。
酔いが覚めかけた頃、既に外は暗くなっていた。白樺は昼間の白さを失い、薄闇に溶け込んでいた。時間はどんな時にも容赦がない。少しだけ笑いたい気分になった。