春一番

4月。新年度。春。

なんだろうなぁ、と思う。気持ちの端っこが、ザワザワと揺れている。

期待?

そうだとしたら、何に?

いや、もう、それは、と笑いが込み上げる。

 

実はYouTubeで小池リオさんの動画を拝見しているうちに、どうしても欲しくなり、

ポケトークを購入した。

海外に行く予定は全くない。英会話とも無縁。英語は大の苦手な私。

ではなぜポケトーク? 完全に失笑。猫に小判。

だってポケトークは音声翻訳機なのだから。

 

購入の動機は、好奇心だった。

単純に自分の発音がどれほどダメなのか、知りたくなったのだ。

というわけで、早速試してみた。

相手は機械なのだから、なんの照れも躊躇いもないはずだった。

しかし、しかしなのだ。意外だった。言葉が出ない。第一声が、喉に詰まったまま、

声にならない。なんと、私はとても緊張していた。顔がかたくなっていた。

そして、ようやく言ったのだ。

I’m an artist

おぉー、言えた!

しかし、ポケトークの翻訳が面白すぎた。

「私は石です」

容赦のない声。

え? 石? いやいや、それはないでしょ? 気を取り直して、もう一度!

I’m an artist

「私は八月です」

ショックというより、不思議な可笑しさが込み上げてきた。

私は思いつく限り、その後も短い言葉で色々試してみた。

最初は苦笑で済んでいたが、そのうち爆笑に変わった。笑った。とにかく笑った。

こんなに笑ったのは、数年ぶりという可笑しさだった。

おそらく、私の体内では細胞が一気に活性化されたに違いない。

笑いながら勢いよく血が巡っている感じがした。

 

ポケトーク本来の使い方とは違えども、これはこれで買って正解だったと、またしても笑った。

私の春一番だ。

久々に愉快だった。