雨が降っていた。透明な糸のよう。まっすぐまっすぐ落ちていく。
札幌行きの高速バスを待ちながら、私はのんびりと雨を眺めた。
うっすらと白くけむった空気。細々とした雨。それとは対照的に、水音を蹴散らし、もうもうと走り去る車。
風景は、何をどの角度から観るのかで、一変する。
いつもなら、自分だけの用事で雨の日に出かけたりはしない。
「雨でもいいか」
そう思えたのは、昨日、約20年ぶりにお会いした職場の先輩であった恵美子さんの影響が濃い。
恵美子さんは、昔からエネルギッシュで多才で、そして懐の深い方だった。今はあちこちの山々を登り、なんとエベレストにも行ったという。
驚きはしても、ストンと納得。全く不思議ではない。むしろ、この方の本来の姿は、こういうことなのだと思った。
ランチをご一緒しながら、特に深い話をしたわけではない。けれども、日常の何とはない話題の中で、その言葉の端々に、明らかに私とは違う視点が盛り込まれており、新鮮だった。
なるほど。
山の景色も、どの地点で、どの角度から観るかで、姿も印象も異なることだろう。
人も同じかもしれない。ものは考えようだ。
要は気持ち一つなのだ。
その証拠に、雨の日だって、今日はこんなに気分がいい。
なんだか嬉しい11月のスタートだった。